USGA And R&A Announce Final Rule On 'Spring-Like' Effect (Aug. 08, 2002)
世界にはゴルフのルールを決める機関が二つ存在する。
1つは、R&A(Royal and Ancient Golf
Club of St. Andrews)。
もう1つはUSGA(United
States Golf Association)。
USGAはNAFTA加盟国を、R&Aはアジア・欧州・豪州などそれ以外のすべての国を統括している。
Callaway・ERCIIが発売されたのが2001年。よく飛ぶ、よく転がると評判のドライバーである。ところがこのドライバーは、USGA統括国では「ルール非適合」のステッカーを付けて販売された。ERCIIはUSGAが1998年に追加した「ドライバーのスプリング効果に関するルール」に違反しているからである。USGAはその公式サイトに写真付きでルール非適合ドライバーのリストを公表している。したがって、プロトーナメントではもちろん、アマチュアの大会でもうるさいコースではルール非適合のドライバーを使うことができない。(たいていどこのコースでもスコアカードに、"USGA rules govern all play."と書いてある。)
一方R&Aは、ドライバーのスプリング効果についてルールを設けることはしなかった。
「ティーオフしたときの飛距離の差が、ゴルフのゲームに支障をきたすことはない(extra distance off the tee is not a threat to
the game...)」と判断したからである。したがってヨーロッパやアジアでは、ERCIIはルール適合クラブである。アマチュアのゴルフではもちろん、プロのトーナメントでもERCIIを使用することができる。
the coefficient of restitution =COR(反発係数)と呼ばれる計測数値でドライバーのスプリング効果は表される。USGAのCOR上限は0.830。ERCIIのCORは0.860である。
大英帝国さんは「いいじゃん」って言っていてアメリカさんは「だ〜め」と言っているわけであります。どちらも頑固で自分の主張を曲げないことは想像に難くありません。でも、「世界に2つの標準があるのはおかしい。混乱を招く。」という世論に応えて、とうとう2つのオーソリティが重い腰をあげて1つのテーブルにつき、真の世界標準を作ることになりました。
2002年5月9日に暫定措置が発表され、8月8日に最終決定が発表された。
この二つの発表の内容は「暫定」と「最終」などという言葉でつなぐことができないほどかけ離れたものでありました。
まず、5月9日の、USGAとR&Aの暫定合意事項は次のとおり。
- 2003年1月1日以降、世界の主要なプロツアーではCOR上限を0.830とする。
- 2003〜2008年の5年間、アマチュアは高反発ドライバーを使って試合に出たり、ハンディキャップを取得したりすることができる。
- 2008年1月1日以降、COR0.830を超えるドライバーは全面的に使用不可となる。
この発表直後は騒然となりました。言うなれば、これまでアメリカで少し肩身の狭い思いをしていたアマチュアERCIIユーザーは、もう"Oh, she is using the illegal driver!"などとこっそり指差されずに、大手を振ってカッキンコッキンと金属音を鳴らすことができるようになるのですから。今まで動向を静観していたアメリカのメーカーも高反発ドライバーの本格的な開発着手決定。Callawayはニンマリと言ったところか。
そして3ヵ月後の8月8日に最終決定が発表された。
結論から言えば、「向こう5年間は、現行2つのルールを平行させるのでよろしく。2008年からは世界中0.830です」。
つまり、USGA統括領域では、
現「スプリング効果」規則であるCOR上限値0.830を継続する。
ルール適合のクラブを用いたスコアのみハンディ算定の対象とする。
R&A統括領域では、
- 2008年1月1日までの間、大部分の競技及び一般プレーに対し、「スプリング効果」のテストとCOR値制限を実施しないままとする。
- 2003年1月1日〜2007年12月31日は上級プレーヤーを対象とする競技に限り、その競技委員会は競技の条件の中でCOR上限値を0.830に決定することができる。R&Aはこの競技の条件を2003年以降のThe Open Championshipに適用する予定であり、また、メジャープロツアーにこの適用を推奨する予定である。
- 2008年1月1日以降、ゴルフ規則はCOR上限値を0.830とする適合テストを加えるよう改編される。
ぜんぜん違うじゃ〜ん!とゴルフ界の誰もが叫んだに違いありません。
暫定措置 最終決定(統括域別) 対象区域 世界中
USGA
R&A
2003年〜2008年アマ COR問わず COR0.830 COR問わず 2003年〜2008年プロ COR0.830 COR0.830 メジャーのみCOR0.830 2008年以降 COR0.830 COR0.830 COR0.830 問題は、USGAでアマチュアのプレイにも0.830ルールを適用させることにした点です。アメリカでは誰がなんと言おうと、プロアマ問わずCORの上限は0.830。暫定措置発表でアマチュアは0.860にしようかなぁとグラついたけどそれはや〜めた。
R&Aとしては、向こう5年はプロもアマも原則として規制を設けないのだけれど、アメリカツアープロが参加するような大きなトーナメントでは、アメリカさんにあわせて0.830ルールを適用させることにします。
あっそ。USGAのハンディを取得するのに、ERCIIを使ってはいけないのね。あ〜ぁ、やばいじゃん。
ところで、こんなにメクジラ立てて大騒ぎする反発係数、0.830と0.860では飛距離にどのくらい差が出るのでしょうか。キャラウェイ社のCEO、ロン・ドレイピュウ氏によれば反発係数が0.01違えば約3ヤードの差が出るとのことです。そうなると0.830と0.860で約9ヤードの差です。クラブ1番手違って来ますから。デカイです。
各メーカーの動きが見えてきました。
Callawayが新製品Great Big Bertaha IIの販売を開始。これにはルール適合バージョンと非適合バージョンがあります。
TalorMade社は5月の暫定発表の直後、高反発(=非適合)R500シリーズの販売を開始しましたが、8月の最終決定にともない生産を停止。ルール適合Rシリーズをあらためて発表しました。Titleistにはルール非適合クラブ発表の動きは見られません。
というわけで一件落着のスプリング効果対決。しかし、現在の計測方法や機械では、両者に値の差が生じるそうです。これからの5年間にさらなるバトルが予想されます。